接着系(注入方式)あと施工アンカーの論点解説|固着分類の年度差・施工方式・破壊モード・耐力
接着系アンカーとは何か(金属系との違い)
あと施工アンカーは、固着方式で大きく「金属系アンカー」と「接着系アンカー」、それ以外の「その他のアンカー類」に分類されます。金属系は拡張部の押し付け(拡張力)で固着するのに対し、接着系は孔に接着剤を充填してアンカー筋と母材を固着します。
用語の定義(よく問われる)
- アンカー筋:接着系アンカーで母材に埋め込む異形棒鋼または全ねじボルト。
- 接合筋:金属系(メネジアンカー)に差し込む異形棒鋼または全ねじボルト。 ※「接合筋」と「アンカー筋」を入れ替える引っかけが頻出。
- 有効埋込長さ:金属拡張アンカーでは母材表面から拡張部先端まで/接着系では母材表面からアンカー筋の有効先端まで。
★最重要:接着系の固着は「付着力(せん断抵抗)」
接着系アンカーの固着メカニズムは、付着力(せん断抵抗)として整理されます。アンカー筋と接着剤、接着剤と母材の界面で、引張力に対して付着とせん断抵抗で耐える、というのが正確な理解です。一方で、金属拡張アンカーは機械的な固着(拡張部の押し付け)で整理されます。「接着系=付着力/金属拡張=機械的」がセットで覚えるべき対比です。
施工方式の分類(カプセル方式 vs 注入方式)
接着系アンカーは、接着剤の充填方法でさらに2系統に分かれます。
カプセル方式
- カプセル状の容器に主剤・硬化剤が分離されているもの、または主剤がカプセルに収容され吸水で硬化するものがあります。
- 孔にカプセルを入れ、アンカー筋で破砕・混合しながら埋め込みます。
- 回転・打撃型:先端が所定の角度(45度程度)に成形されたアンカー筋を回転または回転打撃して埋め込む。 ※先端を「まっすぐ(寸切り)」にしておけばよい、というのは誤りです。
- 打込み型:先端が平坦なアンカー筋をハンマー等で打ち込む。 ※「45度カット」のアンカー筋で打ち込む、という選択肢は誤り(45度は回転・打撃型)。
注入方式
- 現場調合型:主剤と硬化剤を施工直前に手で計量・混合する方式。
- カートリッジ型:主剤と硬化剤が別々にパックされたフォイルパックを専用ガンにセットし、注入時に自動的に混合・吐出する方式。
4つの破壊モード
接着系アンカーが引張力で破壊するときのモードは、次の4つに整理されています。
- コンクリートのコーン状破壊:母材がコーン状に抜ける。
- 樹脂とコンクリート界面の付着破壊:接着剤と母材の境界面で抜ける。
- 樹脂とアンカー筋界面の付着破壊:接着剤とアンカー筋の境界面で抜ける。
- アンカー筋の破断:アンカー筋自体が切れる。
②③をまとめて付着破壊と呼びます。「付着破壊」をコーン状破壊と取り違える選択肢は誤りです。コーン状破壊は母材が円錐状に抜けるモード、付着破壊は界面で抜けるモードです。
接着系の耐力(付着の式)
接着系アンカーの許容引張耐力は、降伏・コーン状破壊・付着の3つの最小値で決まります。付着項は次式です。
τa = 0.56 · 10 · √(σθ / 21)
ここで da はアンカー筋径、ℓe は有効埋込長さ、σθ は母材コンクリートの圧縮強度、φ2 = 2/3 です。有効埋込みが深いほど付着耐力は高くなる傾向があるのが特徴です。なお、許容引張耐力全体は (Ta)a = min{ (Ta1)a, (Ta2)a, (Ta3)a } で決まり、コーン状破壊・付着のいずれかが先に効くかは条件次第です。
養生・硬化時間(施工管理の論点)
- 接着系アンカーは打ち込んだ直後には本来の耐力が出ません。接着剤の硬化を待つ「養生」が必要です。「打ち込んだ瞬間から耐力が出るから養生不要」は誤り。
- 気温(母材温度)が低いほど硬化時間は長く、高いほど短くなります。冬期と夏期で硬化時間が違うのは温度依存のためです。
- 孔内の清掃が不十分だと接着面が確保できず、接着剤の量を増やしても付着力は回復しません。清掃不良は付着力低下の主因です。
- 湿った孔・水のたまった孔では、製品によって耐力が低下するものがあります。「どの接着系も常に所定の耐力が確実に得られる」は誤り。製品の適用条件を必ず確認します。
- 上向き施工では接着剤のたれ・脱落に対する対策が必要です。
- 接着剤で施工したアンカー筋に溶接する場合は、溶接熱で接着剤が劣化する恐れがあるため、必ず管理者の指示を受けてから行います。
接着系の専門資格について
接着系(注入方式・カートリッジ型)のアンカー工事を扱う専門資格として「接着系注入カートリッジ型あと施工アンカー施工士」(通称:注入式施工士)があります。第2種〜技術管理士の本流ルートとは別資格で、eラーニング講習+実技試験で取得します。能力範囲はベースとして保有する上位資格(主任技士/第1種/特2種)に従います。区分の詳細は資格の種類と違いを参照してください。
接着系47問を含む全525論点を一問一答で
固着分類の年度差・破壊モード・養生まで、出題されやすい論点を解説付きで解けます。まずは無料で。
よくある質問
- Q. 接着系は「化学的に固着」と書いたら正解ですか?
- A. 誤りです。接着系の固着は「付着力(せん断抵抗)」として整理されます。「化学的」「化学反応」は典型的な誤答パターンです。
- Q. カプセル方式と注入方式はどう使い分けますか?
- A. 試験では「充填方式の違い」として問われます。カプセル方式は孔にカプセルを入れてアンカー筋で破砕・混合、注入方式は専用ガン(カートリッジ型)または手混合(現場調合型)で接着剤を孔内に充填します。
- Q. 接着系アンカーの破壊モードはいくつ?
- A. 4つです。①コーン状破壊、②樹脂とコンクリート界面の付着破壊、③樹脂とアンカー筋界面の付着破壊、④アンカー筋の破断。②③は付着破壊と総称します。
- Q. 施工直後に荷重をかけても大丈夫ですか?
- A. いけません。接着剤の硬化(養生)を待たないと本来の耐力が出ません。気温が低いほど硬化時間は長くなります。
- Q. 接着系を扱う専門資格はありますか?
- A. 「接着系注入カートリッジ型あと施工アンカー施工士(注入式施工士)」があります。eラーニング講習+実技試験で取得します。