あと施工アンカーの設計力学・耐力計算の論点解説|許容引張耐力・コーン状破壊・群効果・へりあき・地震力
設計の基本:引張とせん断を両方検討する
あと施工アンカーの設計では、引張力とせん断力の両方について耐力を検討します。原則として引張とせん断は独立に検討し、両者が同時に作用する場合には組合せ(相関)も確認します。
- 静的な外力:自重、水圧、土圧など。
- 地震力:機器の重量に水平震度を乗じた水平方向の力(後述)。
★最重要:許容引張耐力は3つの最小値で決まる
あと施工アンカーの許容引張耐力は、次の3つの破壊モードで決まる各耐力のうち、最小値で決定されます。
| 破壊モード | 式 | 支配する条件 |
|---|---|---|
| (Ta1)a アンカー筋の降伏 | φ1 · σy · Ae (φ1 = 1.0) | 埋込みが深く、アンカー筋が先に降伏するケース |
| (Ta2)a コーン状破壊 | φ2 · 0.235 · √σθ · Ac (φ2 = 2/3) | 埋込みが浅く、母材コンクリートが円すい状に抜けるケース |
| (Ta3)a 付着破壊(接着系) | φ2 · τa · π · da · ℓe / τa = 0.56·10·√(σθ/21) | 接着系で接着剤の界面が破壊するケース |
記号:σy=アンカー筋の降伏点(規格値)、Ae=有効断面積、σθ=コンクリートの圧縮強度、Ac=コーン状破壊の有効水平投影面積、da=アンカー筋径、ℓe=有効埋込み長さ、φ=低減係数(1以下で安全余裕を見込む)。
コーン状破壊の式と有効水平投影面積
コーン状破壊で決まる引張耐力 (Ta2)a は、コンクリート圧縮強度の平方根と有効水平投影面積 Ac に比例します。
この式から、有効埋込み長さ ℓe が深いほど Ac が大きくなり、ある範囲までは引張耐力も大きくなります。埋込みが浅いアンカーほどコーン状破壊で耐力が決まりやすいのは、Ac が小さくなり (Ta2)a が支配的になるためです。
群効果:複数のアンカーを近接して並べるとどうなるか
アンカーを複数並べた群で、アンカー筋ピッチが有効埋込み長さの2倍未満になると、隣り合うアンカーのコーン状破壊の有効水平投影面積が重なり、引張耐力が低減します。これを群効果と呼びます。
へりあき(縁端距離)の影響
へりあき長さが有効埋込み長さ ℓe を下回ると、コーン状破壊の投影面積が欠けるため引張耐力が低下します。
- へりあき < ℓe → 投影面積が欠ける → 低減を受ける
- へりあき ≥ ℓe → 投影面積が欠けない → 低減を受けない
またへりあき方向にせん断力が作用するアンカーでは、母材コンクリートの縁が破壊することがあります(へりあき破壊)。引張だけでなく、せん断方向のへりあきにも注意が必要です。
地震力と応力度の計算
地震力
地震力は、機器の重量に水平震度を乗じた水平方向の力として作用します。基本式:
ここで Z=地域係数、KH=設計用水平震度、W=機器の重量。地震時は自重等の静的外力に加え、この水平力がアンカーに作用します。
応力度
アンカーボルトに生じる引張応力度は次式で求めます。
ひずみは ε = σ / E(E:ヤング係数)。許容応力度設計では、この応力度を許容値以下に抑えるよう設計します。
引張とせん断の組合せ
引張力とせん断力が同時に作用するアンカーは、両者の組合せ(相関)を検討します。原則は引張・せん断それぞれを独立に検討し、必要に応じて組合せ式(相関式)で確認する流れです。
低減係数 φ の役割
低減係数 φ は、安全余裕を見込んで耐力に掛ける1以下の係数です。降伏で決まる耐力では φ1=1.0、コーン状破壊・付着で決まる耐力では φ2=2/3 が用いられます(基準書による)。群・へりあきによる低減は、Ac に低減係数を乗じる形で反映されます(群効果0.55、へりあき+群0.36など、条件で変わる)。
設計力学の論点を覚えるコツ
- まず「(Ta)a = min{降伏, コーン状, 付着}」を骨格として頭に入れる。
- 各式が「何に比例して耐力が決まるか」を覚える(コーン状=√σθ × Ac、付着=τa × π × da × ℓe、降伏=σy × Ae)。
- 群効果・へりあきは「Ac が欠ける/重なる」と理解すれば、なぜ低減するかが直感でわかる。
- 地震力は
FH = Z·KH·Wをワンセットで暗記。 - 「強い方で決まる」「化学的に固着」「孔底で反力を受ける(締付け式)」などの典型誤答パターンを覚えておく。
設計力学の論点を一問一答で潰す
耐力式・群効果・へりあき・地震力——技術管理士の午後で問われる論点を解説付きで解けます。まずは無料で。
よくある質問
- Q. 許容引張耐力の式を1つだけ覚えるならどれ?
- A. (Ta)a = min{ (Ta1)a, (Ta2)a, (Ta3)a } を最優先で。3つの破壊モードのうち最小値で決まる、という構造が設計力学の核です。
- Q. なぜ埋込みが浅いとコーン状破壊で決まる?
- A. コーン状破壊の有効水平投影面積
Ac = π·ℓe·(ℓe+da)は ℓe に比例して大きくなります。ℓe が小さいと Ac も小さく、(Ta2)a が他の耐力より小さくなって支配的になるためです。 - Q. 群効果でアンカーが「強い方で決まる」はなぜ誤り?
- A. コーン状破壊はもろい破壊モードです。最も弱い側のアンカー(へりあきが小さい等)が先に壊れ、全体耐力もそこで決まります。最強の1本では決まりません。
- Q. へりあきが十分にあれば低減はゼロ?
- A. へりあき長さが有効埋込み長さを上回っていれば、コーン状破壊の投影面積が欠けないため引張耐力の低減はありません。ただしせん断方向の縁の破壊(へりあき破壊)には別途注意が必要です。
- Q. 地震力 FH = Z·KH·W の覚え方は?
- A. 「地域 × 震度 × 重量」と読み替えると覚えやすいです。設計用水平震度は機器の重量に直接掛けて水平力を出す、と覚えてください。